先日、ある式典でのスピーチを頼まれました。
とんでもない、とてもとても無理!!と言って、断り続けていたのですが、最終的には謹んでお引き受けをいたしました。
日程が結構迫っておりましたので、ドキドキ感が長く続くこともなくかえって良かったのですが、まず文章を構成し紙に書いてみるところから始めました。
しかし、日が変わるごとに書いている文章が変わります。でも、数日繰り返していますと、構成には変わりがない事に気づきました。
基本が変わらなければ、言葉が変わっても何とかなるだろうと思い、一人で声を出しながら練習をしました。
そうすると発見がありました。
まず、私は滑舌が良くない。ということがわかりました。
ですので、口の開き方の練習です。翌朝起きて初めて声を出すときに、声が絡んだようになります。
なるべく人と話すように、滑らかになるようにと心がけることから始まります。
そして、次は基本の流れを覚えるのですが、順番が間違って流れが変わってしまい、思い出すのに数秒かかります。
それによって、話がゆっくりとなり時間がかかることもわかりました。これについては、練習しかありません。
夢の中でも、思い出しながら話しているような状況になりました。
当日は世間的にも著名人な方が多く集まっておられ、その方々が順番にスピーチをされていかれます。そのスピーチを聞いておりますと、皆様あまりにも雄弁でお上手で、益々緊張いたしました。
とうとう私の番が参りました。深呼吸をして意を決して壇上に上がりました。
お陰様で滑り出しは何とかうまくいき始めましたが、話しているうちに感極まって涙が出てきそうになりました。泣いてはいけないと必死でこらえているうちに、外してはいけないと思って、一番練習していた部分は、すっかり消えてしまっていたのです。
しかも壇上を降りてから、あれっ!と気づくのですからもう遅いですよね。
あんなに練習したのにと思いましたが、何とか大勢の皆様の前でお話をすることが出来たことにほっと致しました。
私の長い人生の中で初めての経験です。
そのような機会を頂けたことに感謝しつつ、良い経験になりましたし、あのような著名人の方々の前でお話が出来ましたことは、私の財産となりました。
久保田 泰子